キャリアチェンジプロジェクト ポータブルスキル活用のヒント

利用のタイミングと目的によって
キャリア相談での多様な活用が可能
<キャリア・コンサルタント編>

求職者のキャリア相談の場面でミドルマッチフレームを使用する場合、どのタイミングでどのように使えば有効に活用できるのでしょうか。

今回は、株式会社インテリジェンスでDODAキャリア・コンサルタントとして1万人以上の求職者に関わってきた大浦征也氏に、求職者に対するミドルマッチフレームの基本的な活用方法とそのメリットについてお話を伺いました。

Oomura

株式会社インテリジェンス
大浦 征也 氏

前半に「ポータブルスキル」「専門スキル」、後半に「適応可能性」
理想はミドルマッチフレームのフル活用

ミドルマッチフレームの基本的な使い方は、まず面談前、求職者ご自身にポータブルスキルシートをご記入いただき、マッチングに役立てる方法です。

面談前に求職者にポータブルスキルシート(図1)をお渡しし、強みと思うスキルと、そのスキルを発揮したエピソードをご記入いただきます(図2の①)。求職者にとって、ポータブルスキルシートへの記入は従来の自己分析とも近いので心理的ハードルが低く、導入は比較的スムーズです。なかには、全項目を強みとする人や1つも強みがないと自信のない人もいらっしゃいますが、これは自分自身のなかでの強みを見極めるものなので、「仕事のし方」「人との関わり方」で計3個程度○を付けていただくようにサポートします。それでも選ぶことが難しい場合は、アピールできる過去の仕事をお話しいただいて、そこからキャリアカウンセラーがどのスキルに該当するかをアドバイスしてもよいでしょう。

図1 ポータブルスキルシート

図2 転職活動支援でのポータブルスキル活用例

専門分野ごとにポータブルスキルが表出しそうなエピソード例をいくつか想定しておくとスムーズな面談になるため、キャリア・コンサルタントが得意とする領域・分野の案件から利用するのがおすすめです。

ポータブルスキルの強みが明確になれば、当初の求職者の希望条件だけでなく、その強みを生かせそうな求人案件も視野に入れた転職活動が提案できるようになります。対象求人案件が多い場合には絞り込みに、少ない場合には広げるために活用できると、求職者の納得感が高い転職計画を提案できると思います。一方、多くの求人案件はポータブルスキルの軸で整理されていないため、キャリア・コンサルタントは自分なりに求人企業が求めるであろうスキルを、業界軸、企業フェーズ軸、職種軸等で整理し、仮説を立てたうえで、求職者の強みがどう生かせるかを見立てる力がマッチングのポイントになります(図2の②)。

書類応募や面接フェーズでは、ポータブルスキルの強みを具体的なエピソードを交えて応募書類に落とし込むことができるか、面接でアピールできるかがポイントになります。加えて、「適応可能性」の観点で求職者と求人企業の特徴をすり合わせることができると、より合格可能性を高められるでしょう(図2の③)。

このように、転職活動の前半フェーズでは求職者の強みを生かせる活動計画立案の支援に、後半フェーズではアピールポイントの磨き込みにポータブルスキルや適応可能性を活用することで、入社後の活躍を見据えた転職活動支援が可能になります。

部分的な利用でも効果が見込める
ポータブルスキルの活用例

ここからは、部分的な活用方法について事例を交えながらご紹介します。

1つ目は、やりたいことや強みが曖昧な人に対して、今後のキャリアの方向性を絞り込むときの活用例です。この方は新卒で販売系の某企業に入社し、1年間で人事、営業を経験。その後、経理部で3年間キャリアを積んでいました。転職をするべきか、残るべきか、転職をするにしても、どの分野で自分の強みを究めるべきか迷っておられたので、ポータブルスキルで強みの棚卸しをしました。結果、現状把握力と計画立案力という強みを生かしていきたいということが明確になり、棚卸しのなかで、現職の経理職がそれをさらに伸ばせるフィールドであると判断されました。

2つ目は、書類や面接のアピールポイントの抽出です。これはキャリア・チェンジをする場合に特に有効です。某大手メーカーを早期退職し、再就職支援を希望されていたミドルの方で、特許を保有している優秀な技術者でしたが、同業同職種の求人がなく苦戦されていました。そこで、ポータブルスキルで課題設定力、業務遂行力という自身の強みを再確認し、応募書類を全面的に書き直したところ、3日間で4社の面接に進むことができ、最終的には営業職に転職されました。

このように、ポータブルスキルの最大の価値は、求職者が自身の強みを再認識し、自信を持って転職活動を行えるように支援できることです。カウンセリング段階での自己分析、マッチング、応募段階でのアピールに加えて、活動中の方向性の修正タイミング等でも活用は可能ですので、今回ご紹介した例を参考に、求職者の状況に応じて効果的に活用していただきたいと思います。

大浦 征也 氏
株式会社インテリジェンス
人材紹介事業部 キャリアコンサルティング統括部 統括部長
新卒でインテリジェンス入社後、一貫して人材紹介事業に従事。営業を経験したのち、キャリア・コンサルタントとして、機電系エンジニア、コンシューマー(営業、販売サービス)、管理部門等を担当し、マネジャーに。その後、メディカル、製造業領域のマーケットディレクター(エグゼクティブサーチ子会社のパートナーを兼務)を経て、現職。