人材ビジネスは、求職者にしても求人企業にしても、常に人と関わる仕事。様々なケースに一喜一憂することなく、誠実に地道に対応する基本姿勢がブレなければ結果は必ずついてくる。 失敗も成功も表裏一体、全てが勉強。可能性を信じてトライし続けて欲しい。
人材ビジネス業界で働いてきて、心に残っているエピソードは?
小規模の建設会社に入社頂いた50歳の女性。
最初に登録に来社された時の第一印象は、疲れ切って表情も暗くキツイ感じに見受けられ、地場企業への紹介は厳しいかと思われた。
経歴は、理系のご出身で、大学卒業後も化学系の企業に進まれたが、結婚を機に退職。
家を新築された事で「建築」の世界に興味を持たれ、家事と育児をしながら、職業訓練校で建築設計を勉強された後、設計事務所数社にパートで入り込んで、実務を積まれ、その後、正社員で採用された際、1級建築士・インテリアコーディネーター・管理建築士の資格を取得されたと言う、大変な努力家だった。
そのバイタリティと行動力に感服し、現状に至った状況をヒアリングしていくと、前職で、月に100時間を超えるオーバーワークと彼女自身の責任感とで、心身ともにギリギリの状況に陥ってあり、仕事は続けたいけれども、同じような環境になるのではと言う恐怖心で、気持ちが揺れてある事がわかった。
主婦でありながら、真夜中過ぎに家に帰り、翌朝早く会社に向かう、そんな日が続けば当然、家庭内にも問題は出てくる、また、それだけ残業を続けても給与は変わらずそのままと言う過酷な状況。
それでも、仕事を続けて来れたのは、「建築の仕事が本当に好きだからです。」と言った彼女にようやく、柔らかな表情と共に笑顔が出て来た。
どんなに辛い状況があっても、建築の仕事が好きだと言う気持ちの方が勝っていて、頑張れるんだと言う建築の仕事に対する強い思いがあった。
仕事への意欲やレベルには問題無いし、責任感も十分に有る事はわかったので、こんなに一つの仕事に情熱を向ける事が出来て、一生懸命に頑張って来た彼女には、是非同じ建築業界で今までのスキルを活かして欲しいとは思った。が、まずは、前職での心身の疲れを取る為のリフレッシュする時間は必要だと感じた。
目の前の彼女は、多分精神的にも一杯一杯だったのではないかと思われた。
今は焦らず、頑張りすぎた分をゆっくりと休んで頂き、身体も心も元気になった時点で、正式な紹介活動に入る事をアドバイスし、彼女も十分納得して帰られた。
その間、建設会社の人材ニーズをリサーチし、覆面でアプローチをして行く中で、数週間後、彼女に興味を示した企業が出て来た。
連絡を取ると、既に彼女もすっかり元気を取り戻し、前向きに話を進めて欲しいとの事。
すぐにアドバイス通りに、履歴書の写真も撮り直して郵送されて来た。
順調に面接も進み、前職で味わった彼女の不安材料については、面談の中で出来るだけクリアにし、ご主人とも良く話し合ってもらった。
結果、建築設計業務全般で正社員として採用して頂く事になり、彼女の今までのスキルが活かせるだけではなく、現場での打合せを含め、幅広く新たな仕事を任せられる事になった。
当初は、彼女の精神状態が心配だったが、「建築の仕事が本当に好き」と言う彼女の言葉と新たな事にチャレンジして行く、いつまでも向上心を持ち続けられる「努力の人」は本物で、現在、生き生きと頑張って頂いている。
たまに、様子を見に行く私に「こうして、間に入って対応してもらえる事が自分の不安を打ち消してくれて、安心感があって本当に心強いです。」と言って頂いた。
そのエピソードで感じたこと、そのエピソードを通じて学んだことは何ですか?
登録時に身体と精神状態を立て直すことが先決と感じ、リフレッシュ・休養の為の時間をとったこと、その間にリサーチをして受け皿の状況を掴んでおいた事が功を奏して、いいタイミングで順調に紹介・成約の流れに繋がった例だった。
この優良人材の新規紹介が求人会社に大変感謝され、その後の人材リクエストにも繋がったことはうれしい副産物であった。
人材ビジネスで頑張る皆さんへー激励メッセージ
求職者一人一人、求人一件一件を大切に、地道に誠実に対応することを基本姿勢に頑張っています。
人材ビジネスは、求職者にしても求人企業にしても、常に人と関わる仕事、様々なケースに一喜一憂することなく、基本姿勢がブレなければ結果は必ずついてくると思います。
失敗も成功も表裏一体、全てが勉強です。可能性を信じてトライし続けてほしいと思います。
中川利絵
東京の商社を皮切りに数社にて貿易・営業事務、接客業務に従事した後、
北部九州地区大手人材会社で紹介実務、部門責任者等、幅広く人材サービス
業務を経験。現在は行政での転職支援ナビゲーターとして勤務。