若い主婦達の“働く場”を作り出し、彼女達を支援し・育て・活かそうとしているシニアパワー。 シニアパワーを活かし、若手とシニアの双方のデメリットを補う形で共存することで、長期的な人材確保は可能になっていく。
シニア人材に関する仕事で、印象に残っているエピソードは?
冷凍食品製造A社から求人広告の依頼があったときのことです。
「人手が足りないから高齢者でもいいんだけど、先を考えるとね、若い主婦さんが欲しいのよ」
という社長夫妻。
「小さなお子さんがいらっしゃる主婦の方は、働きたくても働けないのが現状。どこまで融通を利かせられるかが肝になります」そんなお決まりのトークから打ち合わせが始まりました。
ここで出てくるのは大抵、
「土日どちらかは出てほしい」「午前・午後ぐらいは選んでいいけど、それ以外は困る」
「急なお休みとか無理だわ…」という要望。
そんな、企業が提示する条件を求職者視点の提案でどこまで歩み寄れるかが私たちの仕事です。
しかし、このA社は
「今は、働けるときだけ働いてくれればいい。そのうち働けるときが増えたらもっと働いてくれればいいわ」とのこと。そうなれば、時給こそ最低賃金ですが、求職者にとって好都合な仕事と言えます。
どうしてそんなことができるのだろうと伺ってみると、そこには創業30年にわたりA社を支えているシニアたちのパワーがありました。
現在働いている人のほとんどが50代後半以上で最高齢は70代後半。
なかなか自由が利かない主婦を採用したとしても、今ならシニアたちが代役を買って出てくれるといいます。
「子どもが風邪?そりゃあ大変。あたしが代わりにやるからすぐに帰りな」
「出てこられるときにちゃんとやればいいから、子どもを大事にするんだよ」
そういって力を貸してくれるシニアたちがいるからこそ、現代の若手人材を受け入れることが可能となっているようです。予想通り、若い主婦から応募が殺到。掲載期間2週間で5名以上の採用が決定しました。
シニアの募集のエピソードではありませんが、若い方々の“働く場”を作り出し、彼女たちを支援し・育て・活かそうとしているA社のシニアがとても素敵に思え、我がことのように嬉しく、清々しい希望を与えてくれました。
そのエピソードで感じたこと、そのエピソードを通じて学んだことは何ですか?
工場の中には「この人がいないと製造ができない」といわれるほど重要な役割を担うシニアスタッフもおり、彼女は、パートでありながら自分の担当ラインだけでなく、時には工場全体の指示をすることもあるそうです。
繁忙期には昼食をとらずに働くこともザラ。高齢者にとって働くことの意味や目的は、単にお金を稼ぐことだけではなく、働くことで社会に貢献し、また自分が必要とされる存在であると実感することが重要なのだと感じました。
人材ビジネスで頑張る皆さんへー激励メッセージ
雇用形態や給与、条件に対しても比較的柔軟で、仕事にやりがいを求めている高齢者を受け入れることは企業にとって朗報だと言えます。労働人口の減少で今後ますます人材獲得競争の激化が予想される中、若手だけを求めるのではなく、若手とシニアの双方のデメリットを補う形で共存することにより、長期的な人材確保につながるのではないかと考えます。
匂坂晴子
地域情報誌のSP広告営業として販促に携わった後、2014年12月より求人広告営業として勤務。