一番心に残っているエピソードは?
人材紹介コンサルタントとして経験した、ゾッとするほどスリリングな、でも少し掛け違えばどうなっていたのか・・・と思い返す事例を紹介します。
約10年前、世界的メーカーの資本傘下となった中小紙製品メーカーの求人でした。同社の人事総務部長は、その4年程前に弊社経由で入社された方。キャリアアップを志向するこの人事総務部長(A氏)は、「今より規模の大きな企業で人事制度構築をしたい」と転職を希望されており、同時にご自身の後任人材の紹介を依頼されました。
A氏の新たな転職先は順調に決まりました。福祉業界のNO.1企業が、未整備の人事制度を構築できる人材を求めており、応募早々に内々定をもらったのです。ただ、A氏の退職交渉が難航しました。現職企業の社長から後任を採用し引継ぎをしてからでないと退職は認めないと引きとめられてしまいます。
転職先として内々定を申し出た企業へ、出社日が不確定と状況を説明したところ「3ヵ月待つが、それ以上かかるなら白紙としたい」との事。これでは、そもそもの転職希望が叶わなくなってしまいます。
後任採用を急ぐA氏からは、スピードを優先し他のエージェントにも至急案件として頼むので競合になると明言されました。2週間が瞬く間に過ぎていき、その間大手エージェントからは複数の紹介があり、面接に入るという状況でした。まずはA氏の内定作業を優先した弊社は、後任探しに出遅れてしまったかっこうです。
この時私は、「すぐに就業可能な」「人事総務プレイングマネジャー」人材を必死で探していました。そこに浮上したのが、大手メーカー出身のコンサルタント(B氏)です。この職務に興味を示してくれたB氏を早速企業へ紹介しました。
面接後、A氏からは他の候補者より一段上の素晴らしい方だ、是非採用したいと嬉しい言葉。
すぐにB氏に採用通知書を提示しました。ところが、B氏の年収希望額と提示額には200万円の開きが。
B氏の入社を期待し1名に絞って交渉するか、他の可能性を模索するか・・・。
A氏とB氏との間に入り様々な提案確認をしていく中で、私は最終的にこの溝を埋めるのは難しいと感じていました。
そこで、次の候補者探しも再開。一方B氏の入社交渉は、一週間の折衝を経て金額差が100万円まで縮まったものの、残念ながら最終的にはご本人辞退となりました。
この間も候補者探しを継続していると、条件に合致し応募に意欲的なC氏を見出すことができました。
A氏へB氏辞退の旨伝えると同時にC氏を紹介。この時点で既にA氏の退職スケジュールは逼迫しており、他のエージェントからも適任者が見つからず、A氏もC氏に望みをかけて面接となりました。
結果、総合的にはB氏に劣るが実務経験もあり及第点と社長より採用OK!との言葉があり、その日のうちにC氏への入社応諾を得て入社日も2日後に決定。A氏と2週間引継ぎ期間を取ることができました。C氏が入社し、2週間の引継ぎを終えA氏が退職。その翌日からA氏は無事内定先企業へ出社、とギリギリのところで、全てが納得いくところにおさまりました。
そのエピソードで感じたこと、そのエピソードを通じて学んだことは何ですか?
今思えば、「二兎を追うものは…」になりかねない状況の連続でした。
その中でも、最終的に最高の結果を導くことができたのは、人事担当のA氏との強いグリップ、そしてエージェントとして先を見越した迅速な対応によるところだと自負しています。
迷った時、悩んだ時、何かを変えたいと思ってこのサイトを見る人材ビジネスに携わる方々に 元気と勇気が湧くような激励の一言メッセージを是非お願い致します!
売上は後からついてくるものですね。
求職者の真意に寄り添った対応を第一に考えた行動発言が、求人企業・求職者から信頼を得る事につながるということ。日頃はどうしても求人企業の意向を追いかけていきがちですが、迷ったら一度立ち止まって視点を変えて見てはいかがでしょうか。
冨田 順一
23年間、大手人材サービス会社にて企業の人材採用に関する営業からコンサルティングに従事。
その後、求職者の喜ぶ顔が直接見たいと考え人材紹介事業に就いて13年、個々人の笑顔を目の当たりにして転職という人生の重要なシーンでお手伝いできる喜びを実感し日々精進しています。