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キャリア形成支援プロジェクト インタビューコラム この人に聞く 「キャリア」の話

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派遣社員の処遇向上や正社員転換と「4つのチカラ」

派遣社員のキャリア形成や汎用的スキルの役割について研究されているニッセイ基礎研究所主任研究員の松浦民恵さんに、派遣社員の処遇向上や正社員転換に対して「4つのチカラ」が及ぼす影響についてお聞きしました。

「派遣社員の時給水準」について研究されていますが、
どうすれば時給水準を上昇させることができるのでしょうか。

事務系職種の派遣社員について分析すると、時給水準の上昇に、派遣社員自身の行動が大きく影響していることがわかりました。具体的には、「派遣会社と賃金に関する交渉を行った」「自分の処遇改善につながる情報(賃金水準等)を収集した」あるいは「派遣先や派遣会社にキャリアの相談をした」等の行動があげられます。

時給水準の上昇に向けては、派遣先や派遣元からの支援も重要です。意欲やスキルがあれば雇用形態にかかわらず仕事を任せてもらえる、働きぶりをきちんと評価してくれるような派遣先では、仕事の幅が広がったり、仕事の難易度が向上しやすいことから、時給も上昇する傾向がみられます。また、実際に時給交渉を担うのは派遣会社なので、派遣会社の営業担当者が交渉しやすいような環境づくりも重要なポイントになります。具体的には、派遣社員が普段の働きぶりを通じて派遣先から信頼を得ていることや、派遣社員と派遣会社の営業担当者が時給上昇の交渉材料となる情報を共有できていること等が、交渉を成功につなげるカギになるのではないでしょうか。

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出典:松浦民恵「どうすれば時給が上がるのか」佐藤博樹・大木栄一(編)『人材サービス産業の新しい役割』(2014年、有斐閣)
表2-7 派遣スタッフの能力開発・キャリア形成行動(派遣事務職)

汎用的スキルを「4つのチカラ」で測定(評価)し、処遇向上や正社員転換との関係を分析されましたが、その結果について教えてください。
また、「4つのチカラ」を向上させる実証実験の結果を、どのようにみておられますか。

日本人材派遣協会が2013年に実施した「派遣社員WEBアンケート調査」をもとに、「正社員になることを打診された」「給与が過去3年で上昇した」「時給水準が高い」の3点について、「4つのチカラ」が有効かどうかを分析しました。その結果、就業期間、職種、仕事の難易度など他の要素を考慮に入れたとしても、「4つのチカラ」の総合点が高いと、これら3点のいずれにもプラスの影響があることがわかりました。

人材サービス産業協議会が2013年から2014年にかけて実施した、「4つのチカラ」の有効性に関する実証実験では、84名の派遣社員の方々が、1ヵ月、「4つのチカラ」を向上させるための取り組みを行っておられます。取り組みの前後で「4つのチカラ」の評価(平均スコア)を比較した結果をみると、いずれの力も上昇しています。

実証実験に参加された方々からは「気づきがあった」「人間関係が円滑になった」「仕事がやり易くなった」といった声があがりました。「4つのチカラ」は、汎用的なスキルであり、仕事をしていくうえでの基本的なスキルだともいえますが、仕事を続けているとその重要性を忘れてしまいがちです。ですから「4つのチカラ」の評価をアセスメントとして定期的に実施することは、処遇向上や正社員としての就業に向けた取り組みとして意味があると思いますね。

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