ポータブルスキルの活用を機に再考すべき職業紹介に人が介在する価値
【導入事例】エン・ジャパン株式会社
2015年5月、エン・ジャパン株式会社では、ミドルマッチフレームが人材紹介部門に一斉導入されました。そこで、同社代表取締役社長の鈴木孝二氏に、今回の導入の背景とその効果についてお話を伺いました。
代表取締役社長 鈴木 孝二 氏
今回、ミドルマッチフレーム導入を決断された背景を教えてください。
産業構造の変化や少子高齢化、ITの進化により前職での知識や専門性をそのまま生かせる転職はますます困難になってきます。10年後にはなくなっている業種や職種もあるでしょう。このような変化のなか、われわれは当社の職業紹介事業としての“ありたい姿”について徹底的に議論し、2つのことを決めました。1つは、従来の専門知識やスキルにとらわれない転職の支援。もう1つは、当社が大切にしている入社後の活躍を実現する転職の支援です。
そこで有効性を感じたのが、JHR(一般社団法人 人材サービス産業協議会)で開発したミドルマッチフレームでした。このフレームはミドル層を想定して開発されたものですが、専門性以外の能力を測る非常に本質的なフレームなので、年齢層に関係なく使えます。また、共通言語化することで業務効率を高められること、導入前に実施した研修におけるミドルマッチフレームに対する社員の反応がよかったことなどから、人材紹介部門への一斉導入を決めました。
導入されて半年近く経ちますが、効果はいかがですか。
実を言うと、導入時点ではそんなに早く効果が出るものではないと想定していました。しかし、ミドルマッチフレームを日々の業務で地道に活用し続けたことで成約率が上がったという社員が7月にMVPをとるなど、すでに目に見える形で効果が表れ始めています。
当然、活用度や成果には、まだまだ個人差がありますが、想定以上に早く結果が出たのは、ポータブルスキルがわれわれの目指す姿にうまくフィットしたからです。業務フローへの組み込みや、成績優秀者の出現による利用効果のプロモーションなど、最初のフェーズは乗り越えました。これからは、フレームを理解したうえで、誰もが同じようなレベルで活用できるよう、OJTを通して粘り強く浸透させていくフェーズと認識しています。
また、今後注力すべき課題と捉えているのは、法人担当側における活用の促進です。そもそもポータブルスキルを引き出すには決裁者と接触することが大きなポイントとなりますし、求人企業へポータブルスキルに落とし込むことについて啓発を行うことも必要です。今後、全ての求人案件でポータブルスキルを可視化していくには、信念をもってやり続けることが重要です。
今後に向けて、ミドルマッチフレームに期待することなどについて、一言お願いします。
冒頭でも申し上げた通り、今後、業種や職種を超えた労働移動が求められてくるなか、職業紹介事業に「人」が介在する意味は何なのか、改めて問い直す時期に来ているのではないかと思います。ITの急速な進展により、従来の専門知識やスキルといった条件面でのマッチングは機械に置き換わっていく。一方、業種や職種を超えた転職支援は人が介在する価値を十二分に発揮することができます。将来の業界の発展のためにも、一社でも多くの企業の皆さまと志をともに、一緒にこのフレームを活用していけると嬉しいですね。