ポータブルスキルの活用で課題顕在化前からの相談が増加
【法人営業担当者の活用例】
桑原 由起子さん(エン・ジャパン株式会社 法人営業担当)
顧客企業に対し、ポータブルスキルをうまく活用して商談を行うには、具体的にどのような工夫をすればよいでしょうか。今回は、エン・ジャパン株式会社に新卒採用で入社してから9年間一貫して中途採用領域に携わってきた法人営業担当の桑原由起子さんに、日常的に業務のなかで活用しているというポータブルスキルの活用方法や工夫についてお話を伺いました。
ポータブルスキルを知ったとき、どう感じましたか。
実は以前から要件定義の際、入社後の活躍を視野に、業種や職種の経験だけではなく、必要とされている能力も肌感覚で見ていました。しかし、ミドルマッチフレームではその能力がポータブルスキルとして可視化されていたので、より一層、要件定義や分析をしやすくなる、と感じました。実際に、ポータブルスキルシートを介してお客様と採用要件を確認することで共通認識をもてるので、ご支援していく途中でご要望やイメージがぶれなくなりました。また、ご要望内容自体が変わってきた場合でも、共通言語の下で軌道修正できるので、認識の齟齬が生まれにくくなっています。
社内でも、所属チームメンバー全員でポータブルスキルを活用しているため共通言語で話ができ、アドバイスや教育がしやすくなりました。最近では、週次のチームミーティングで活用事例を共有することで、汎用化が進み始めています。
社内で報告された活用例のなかで、特にうまくいった事例はどのようなものですか。
建設業の某企業様の案件で、先日成約した例があります。同社では当初、若手の一級建築士資格保持者を希望されていました。しかし、ご希望の条件に適う方がそもそも現在の中途採用市場に少ないこともあり、要件についてポータブルスキルシートを使って再度ヒアリングしました。そこで再確認できた必須要件は2つでした。1つは、お客様の要望を具現化できる建築の専門知識と課題遂行能力が必要であること。もう1つは、社内において若手を育成できる部下マネジメント力が必要であることです。採用ご担当者様は当初、若手メンバーと経験年数が近い方がよいと考えられていましたが、重要なのはそこではなく部下マネジメントの能力でした。その点に注目してご提案した結果、ベテランの一級建築士の方が採用され、今まさに活躍されています。
素晴らしい例ですね。しかし、誰もが最初から、うまく活用できるわけではありませんよね。
そうですね。お客様のご要望を伺うなかで、事業戦略に基づいた募集背景をヒアリングしたうえで、仕事内容や組織構成を“コト軸”で整理しています。当然、お客様の業界知識も前提となりますが、チームの若手営業にはポータブルスキルの項目を基にヒアリング項目を整理した上で商談に臨ませています。
“コト軸”でヒアリングできても、ポータブルスキルに落とし込んでお客様と合意するのが難しいという声もありますが、何かよい工夫はありますか。
私は、“コト軸”で仕事内容、組織構成を整理した後、最後にもう一度“ヒト軸”に戻してお話ししています。
例えば、賃貸仲介営業の求人の場合、必要な『仕事のし方』の能力は、顧客の希望の住まいをヒアリングしてイメージを共有・理解する「現状の把握」と、ニーズに合った住まいを提案するための「課題の設定」の2つが見出されます。また『人との関わり方』は、顧客からの信頼を勝ち取れる「社外対応」のスキルが必要になることが多いです。必要なポータブルスキルが明確になったら、今度はそのスキルを保持している「ヒト」が存在する業界・職種を考えます。この例ですと、アパレルや携帯電話の販売員経験者なども対象として広げられます。こうして「ポータブルスキルで採用要件を整理することで、必ずしも業界経験・知識が不可欠な要素ではない」と判断できれば、お客様の納得感を高めつつ、業種や職種に関係なくスキルがマッチする方をご提案しています。
この例のように、業種・職種を超えて必要なスキルセットを共通化できる仕事は、他にもたくさんあります。特に、営業職は一口に営業といっても仕事のし方や人との関わり方が多種多様なので、上述のような提案がしやすいと思います。
ポータブルスキルを活用するようになって、ご自身の仕事に変化はありましたか。
お客様から潜在ニーズの段階でご相談いただけることが増えました。ポータブルスキルのおかげで、言語化されていないご要望を可視化しながら分かりやすく整理できるようになったからだと思います。長期にわたり担当させていただいている既存のお客様であっても、改めてポータブルスキルを使ってご要望を整理してみると、顕在化していなかった新たな人材ニーズが現れ、従来とは異なるスキルセットの人材の採用をご支援できた例もあります。
今後、ポータブルスキルをどのように活用していきたいですか。
ポータブルスキルを使うことで痛感したことは、どんなにお付き合いが長く、よく分かっているつもりのお客様でも、まだまだ知らないことばかりだということです。コト軸ヒアリングをうまく活用して潜在的な課題を掘り起こし、ポータブルスキルを使って採用要件を明確化できるようになると、より早い段階からお客様の課題解決に深く寄与していけます。こうして、さらに信頼を深め、中長期的なパートナーとして選ばれる存在に成長していきたいです。
エン・ジャパン株式会社
法人営業担当