1975年創業のサーチビジネス(ヘッドハンティング)のパイオニア。エグゼクティブ・サーチファームとしてトップからミドルクラス、さらには若手の幹部候補まで幅広いクライアントのニーズに応え、これまでに20,000名を超えるサーチ実績を誇る。昨今はトップマネジメントも低年齢化が顕著となっているため、ジュニアクラスの幹部候補のサポートも手がけている。
音楽とビジネスを学ぶために渡米。 帰国後に、オリックスの投資銀行部門に就職する。
私は高校まで歌を勉強していて、大学進学の際には音楽の道に進むか、それともビジネスの道に進むか悩んでいました。そんなときに、アカペラのグループに所属しながら経営学を学べる大学がアメリカにあることを知り、「両得」を狙って、留学しました。また、父が自動車メーカーのサラリーマンで、日本から海外に出て行くという背中を見ており、小さい頃からビジネスというものを身近に感じていたことも渡米したキッカケになったと思います。
大学では、経営学部でさまざまな科目を学びましたが、自然とヒューマンリソースの領域に興味が惹かれていきました。それが今の仕事の原点になっています。大学を卒業した後は、アメリカに残ってインターンとして数社でビジネスの現場を経験。日本に帰国して就職した会社が、オリックスでした。
配属となったのは「投資銀行部門」。企業に投資をしてキャピタルゲインを狙ったり、後継問題を解決したりする、社内でも「別働隊」と言われるような部門でした。当時、私が注目したのは、企業買収時の新しい経営者の選定です。それこそが、企業経営において大きな要素の一部になると思ったのです。こうした経験から、「プロ経営者を探す」ということが日本においても、のちにウエイトを大きく占めてくるのではないかと考えました。
ダイナミックなパラダイムシフトを提供できる、 エグゼクティブ・サーチとの出会い。
オリックスでは、企業に投資を行いながら、その企業にメンバー自身が赴いてご支援をしていきます。私自身も、投資先の事業会社に身を置き、人事の責任者を担当する機会がありました。これまでは客観的に人事というものを眺める立場だったのですが、今度は戦略的・事業的に人事を見る立場になったのです。私が出向した企業は、業態や体質を大きく変化させなければならない時期にありました。そこで、新しい事業に打って出るために「ダイナミックな中途採用」を行ったのです。その際に初めてエグゼクティブ・サーチを使った採用を、事業会社の観点から行うことになりました。
そうした経験を経て実感したのが、「エグゼクティブ・サーチであれば、ダイナミックなパラダイムシフトやインパクトをクライアントに提供することができる」ということでした。それが、このビジネスに足を踏み入れるキッカケになったのです。数あるサーチ会社のなかでも特に、日系の独立系であれば登竜門として最適だろうと考え、東京エグゼクティブ・サーチに入社しました。
一歩先行く外資系サーチ会社が多い中、 「ピュアサーチ」に強みを持つ。
エグゼクティブ・サーチファームは、経営に関するさまざまなノウハウを持った「戦略コンサルティングファーム」の一部門からスタートしています。ですので、欧米のトップファームのコンサルタントは、かなり「経営コンサルタント」に近いコンピテンシーを持っています。しかし、日本では終身雇用が根強かったり、新卒採用重視の採用だったりと、日本特有の人事管理制度が定着しています。そのため、日本は欧米に比べてHRコンサルティングを提供するノウハウが20~30年遅れているという実感があります。
一歩先を行く外資系サーチ会社が多い市場の中、当社の強みは、ピュアサーチです。ピュアサーチでアプローチするのは、「潜在の潜在層」。これは「転職を全く考えたことがありません」よりもさらに現在の会社から将来を嘱望されており「転職を絶対したくありません」という人を対象にするものです。
優秀な人材に選ばれるために、 クライアントへの指導・アドバイスも行う。
ピュアサーチというのは転職をしたい方ではなく、「是が非でも転職をさせたい」という人だけをサーチ対象にして、そこからリストを作ってプロジェクトを進めていきます。そのために「探すこと」の努力も大事なのですが、そういう人に選ばれるような会社であるために、ときにはクライアントに対しても我々から厳しい指摘などをすることもあります。一般的にエグゼクティブ・サーチは、「人材を探している難しさ」が目立ちますが、実は企業の経営者などにアドバイスし、一層の努力を求める点もピュアサーチの価値だと感じています。
素晴らしい人材を見つけてきても、そういう人たちは将来性のない経営者のいる会社は選びません。選んでくれるような経営者や会社になっておいてもらわなくてはいけないのです。そうしたコンサルティングまでを手がけるのが、ピュアサーチなのです。
ITの浸透で、「人脈が活きない」。 そこで求められるアーティスティックな発想。
一方、ピュアサーチが難しいところは「人脈が生きない」ところにあります。昔はエグゼクティブ・サーチというと人脈商売だと思われていたのですが、ネットリテラシーが劇的に変わりITのツールが進化して、情報の獲得が表面的に容易になった今、人脈はあまり役に立たなくなりました。さらに言えば、企業の変化スピードが速すぎて、人脈の意味がなくなってきているのです。クライアントからオーダーがくるポジションの採用ニーズというのは変化が早く、過去の事例と一致することが少ないため、毎回毎回ゼロからスタートになります。
そのため、アーティスティックな発想で「どこに求める人材がいるんだろう?」というような仮説を立てる能力が、求められています。さらにピュアサーチは、300人の名簿を入手して、1日で見ず知らずの300人に延々と電話をかけ続けるなど、「みんなが敬遠するようなことを延々とやらなくてはいけない」という難しさもあります。
社員を経営者に対峙できるレベルに引き上げ、 外資系トップファームと五分に渡り合う。
今後の当社ですが、当面に関してはピュアサーチに関して研鑽を深めていく現状の体制を維持し、お客様からご要望があった時に即応できる体制を確実に堅持していきます。中期・長期的には、外資系のトップファームと五分に渡り合える会社になりたいと考えています。
さらに当社のピュアサーチ能力の一定の高まりが確保できたと判断できた際には、リサーチから派生するサービスやもう少しHRの深いコンサルティングノウハウを社員にレクチャーし、経営者と対峙できるサービスのメニューや幅を少しずつ広げていきたいと思います。
クライアントが求めるレベルに応じた適切な価値提供をし、 経営者の良き相談相手になる。
人材紹介や人材派遣、サーチというようにさまざまなビジネスの形がありますが、「共存共栄」して健全に発展していきたいというのが、私から人材業界に携わる方へのメッセージです。一方、人材業界に従事する人たちが真摯に受け入れなければならないのは、もう日本は現実的に「量の時代ではなくなっている」ということです。
人を大量に入れ替えたり、何度も人材を紹介して企業が不用意な支出を繰り返したりすることで、企業体力を減少させることは避けなければならないと思っています。業界全体が考えなくてはいけないのは、きちんとした戦略に基づいた人員計画を提案することだと思います。ですので、謙虚に学び、本当に企業が求めるレベルで適切な価値提供をしていくこと。これに対して真剣に取り組み、経営者の良き相談相手にならないといけないと感じています。
▲社員との食事会。20代から70代まで多様な経歴を持つコンサルタントが活躍中。
▲プライベートでは、「六本木男声合唱団倶楽部」に所属。
福留 拓人 (フクドメ タクト )
[プロフィール]
2012年10月 東京エグゼクティブ・サーチ株式会社 取締役社長 就任
2014年10月 同社 代表取締役社長 就任
東京エグゼクティブ・サーチ参画以前は米系コンサルティングファームにて米国・欧州進出企業のための進出支援プロジェクトに従事。日本へ帰国後はオリックス株式会社に勤務した後、教育系企業のCHO(最高人事責任者)を歴任。
- お勧めの書籍 : トルストイやドストエフスキーなどロシア文学全般
- 信条 :
一、至誠に悖る勿かりしか
真心に反する点はなかったか
一、言行に恥づる勿かりしか
言行不一致な点はなかったか
一、気力に缺くる勿かりしか
精神力は十分であったか
一、努力に憾み勿かりしか
十分に努力したか
一、不精に亘る勿かりしか
最後まで十分に取り組んだか