人材ビジネス業界で働いてきて、心に残っているエピソードは?
入社以来、技術系の職場で製品設計や生産技術に関する業務に携わってきましたが、客先からの帰任をきっかけに人材開発部に異動することになりました。
人材開発部は社員の人材育成をメイン業務としており、各階層別研修の企画運営の他、設計製図、設計ツールやプログラミングの基礎教育、資格試験取得のサポート等幅広く行っています。その中で、私が主に担当したのが社員向けの設計ツール3次元CAD操作教育です。
社員の多くは何かしらのCADソフトをツールとして設計を行う技術者ですが、社員によっては3次元CADの操作習得やレベル向上が必要となります。とりわけ習得に時間と経験が必要な3次元CADの基本操作を人材開発部で教育することは、技術部門内で教育することの負担を軽減し、また実務への取り掛かりがスムーズになります。受講対象は新人からベテランまで様々で、必要に応じた受講コースが選択できるようになっています。
講師業務は先輩社員からの引継ぎのため、既にコンテンツは完成しており、研修運営での不明点はすぐに聞ける環境だったため、教育はいたって順調に進めていました。慣れも出てきて自身の実務経験も織り交ぜながら、ただ操作を教えるだけでなく、実務でポイントとなることなども交えた講義を行うようになり、教育することに多少の自信も付いてきました。
そんなある日、教育を修了し送り出した社員の職場上長から、とある形状の作成方法で『どんな教え方をしたのか?』と問い合わせがありました。詳しく聞くと、『作り方が実務に沿っていない!』という内容でした。
同じ職場にはこれまで修了者を送り出してきましたが、今回初めての指摘でした。
講義ではその形状の具体的な作成方法は説明していませんが、研修を修了することで相応の技術が身に付くため、この話を聞いたとき何故このような苦情になったのか、よくわかりませんでした。
しかし、私が伝えたつもりでいただけで、思った通りに伝わっていなかったということ。これまで何事も無かったのは偶然に過ぎなかったことに気がつきました。
日々、少しずつ研修に変化を付け、より良くしてきたつもりでしたが、今回の件は社員というお客様に迷惑を掛けたのだと肝に銘じました。そして、技術部門から直接指摘を受けたことは、その職場に沿った教育が望まれており、これまでの研修にプラスするきっかけになったことは言うまでもありません。
そのエピソードで感じたこと、そのエピソードを通じて学んだことは何ですか?
多くの人がいる中で、皆がまったく同じ受け取り方をすることはないでしょう。しかし、仕事でのアウトプットに個性を出してはいけない場合もあります。この講義の先にはお客様(社員)がいて、更にその先には本当のお客様がいる。そんな風に考えながら研修を運営することで、研修に対してより責任を感じるようになったとき、一皮剥けた(成長したな)と感じました。
人材ビジネスで頑張る皆さんへー激励メッセージ
人の成長は自己努力だけでまかなえるものではありません。未熟な私は教育の現場で教えることよりも教わることの方が多いですが、その中で自分の強みを持つことと、弱みを知ることが自身の成長へつながるのではないかと思います。今回のように周りからの刺激で気づかされることもあります。その信号を逃さずにキャッチし、どう活かすかを考えることが大切ではないでしょうか。
中山 敦
1996年11月 入社、3次元CADを使った製品設計に携わる。
2009年4月 間接部門にある『人材開発部』に異動。主に3次元CADの教育に取組む。