[東京海上日動キャリアサービス企業紹介]
東京海上ホールディングス100%出資の総合人材サービス企業。
「お客様満足」「スタッフ満足」「社員価値」の『3つの向上』を事業活動の原点におき、経営品質ナンバーワン企業を目指している。
女性の活躍推進のきっかけは、抜本的な業務改革
会社にとって初めての女性営業部隊創設プロジェクトが発足
損害保険は偶然のリスクによって損害をカバーするための保険です。
あらゆるリスクに対応できるよう、幅広い商品がありますが、リスクは時代の流れと共に変わり、法改正で新しく生まれてくるリスクも多い。
私が若い頃は、「何か見たら、それが保険にならないか、いつも考えろ、想像しろ」と教育されました。
新たなリスクに対応して商品を作っていくことが損害保険の特徴でもありますが、新たな商品を作り続けた結果、商品は2000種類を越え、それに関連して膨大な保険事務業務が発生していることに、会社としての問題意識がありました。
そこで10年前、膨大な保険事務業務を軽減するための抜本改革が始まりました。商品・事務・システムを抜本的に見直すことで事務作業は大幅に効率化・簡素化され、負担は格段に軽くなっていきました。
これまでその膨大な事務業務を支えてくれていたのは、昔でいう一般職(現在では地域型)の女性ですが、事務作業の効率化と共にこの方たちの仕事が減っていくことになりました。
そこで、逆に彼女達の力を「営業」という別の形で活かせないか?そして、これまで営業をしていた男性をグローバルや企画など別のフィールドで活かせないか?という取組みが始まったのです。
できない理由を並べる男性リーダー、事務職から営業職転換を不安に思う女性陣
社内の抵抗感は根強く、様々なハレーションが起こっていた
その当時、私は中国・四国ブロックの担当役員だったので、現場で女性の活躍を推進することになるのですが、社内の抵抗は結構ありました。
事務職として入社したつもりが、突然営業担当としてクライアントのところに行く訳ですから、それは不安も大きかったと思います。
しかし、抵抗があったのは女性達だけでなく、男性のリーダーからも大きな抵抗がありました。
これまで男性の営業しか部下に持ったことはないリーダーばかりでしたから、「女性はなかなか残業が難しい」「接待でゴルフとか無理でしょ」と女性を男性と比較して出来ないことを並べ「だから出来ないんだ」と言い訳を始める。
これはダメだなと思いました。
もっと女性の強みを見なさいと説き続けました。
出向先の女性営業に同行した際に体感した「女性ならではの強み」
この実感があったからこそ「女性営業は絶対イケる!」と信じて推進できた
中四国担当役員になる直前、私は日新火災に出向していました。
日新火災さんでは、既に女性営業の戦力化が上手くいっており、女性営業が活躍している姿を目の当たりにして驚きました。
そこで、5名の優秀な女性営業に同行を願い出て、5日間同行させてもらいました。
私も長らく営業をしてきましたので、代理店さんへの営業は心得ていたつもりでしたが、驚きました。
何に驚いたかというと、彼女達は非常にはっきり、明快に代理店の社長に対してものを言うんです。
「これはどうなっていますか?」「前回お伺いした時、こうでしたけど、上手くいきましたか?」というようなことをスッと言える。
言われた社長も「あっ、ごめん、ごめん」と笑いながら謝っている。怖い社長さんがですよ。
社長の奥様も「社長、ダメじゃないの。約束してたじゃない」などと言って、営業の味方をしてくれている。
これが男性だったらそうはいかない。驚きました。
多少厳しいことを言っても、ソフトに受け止めて貰える。
女性ならではの凄さを実感しましたし、その実感があったからこそ、中四国担当時代、自信を持って女性の活躍推進を進められたと思います。
ないものを求めるのではなく、これまでの経験をどう活かしてあげるか
事務に精通する女性ならではの営業スタイルを推進
私が代理店さんのところにいくと、社長の奥様(事務を担っているケースが多い)からは「お宅の担当者は、事務が分かっていない。
色々言っても回答が遅い」、社長からは「お宅の営業担当者は事務に時間を取られて、企画だとか、提案だとか、同行するとか、営業的なことが後回しになっている」と、よく言われました。
その不満を事務に精通した女性が担当することで払拭出来るのではと思いました。
とはいえ、実際に営業を女性に変えることに対して、代理店さんも抵抗があるのではと思ったので、女性営業を導入後、代理店さんにヒヤリングを掛けたところ、皆さん「きめ細やかだし、色々なところに気が利く」「信頼できる」と、とても喜んでくださっていました。
私が意識してやったことのひとつが「褒める」ということ。成果を報告する仕組みがあり、役員のコメント欄などなかったのですが、全ての成果報告を私のところに回させ、「良くやった」「じゃ、次はもっとこういうことをやってみよう」と全案件にコメントを書いていました。
人は褒められると嬉しいものです。100倍、200倍の力を発揮してくれる。出張が多かったので、移動の車内で一生懸命書いていましたね。笑。
さらなる女性の活躍推進のために女性が女性をサポートする仕組み作りへ
現在、代理店の保険収入料の8割を女性営業が担当するまでに拡大
中四国の後、営業企画・推進を担当する部署に異動し、女性の活躍をさらに進めることになりました。
そこで、中四国時代に行っていたことのひとつで成果の出ていた「女性による女性のためのサポート部隊(AST)」を全国に展開することにしました。いわゆるメンターです。
メンタル的なところが一番のハードルと思っていました。だからこそ、女性営業の不安や不満を、「きちんと聞いてあげること」がとても重要ですし、「ああいう人になりたい」とロールモデルとして背中を見せてあげることも重要です。
知識以上に大切なところです。そこで、ASTには営業経験のあり、目指したいと思って貰えるような方々をノミネートして担ってもらいました。
一方、メンターとなるASTの皆さんひとりひとりに「何を担って欲しいか」を何回も何回も直接話をしました。
皆さんやる気になると「もっとこうした方がいいのでは」「こんなものを作ろう」と、どんどんアイデアを出してくれて、いい回転になっていきました。
結果はきちんと数字となって現れました。自動車保険の更新率が約5%近く上がったのです。
これは保険料収入としては数百億円程度に当たります。数百億円の売上を新規で獲得しようとしてもなかなかできないこと。
しかもそれが毎年のことなのですから、彼女達の生み出した成果は素晴らしいものです。
現在保険収入料の8割を女性営業が担うまでとなりました。
またそれに伴ってこれまで営業をしていた男性は、白地開拓に時間を充てることが可能となり、従来2割程度の開拓時間が今では、5割程度まで拡大しています。会社の大きな成長エンジンになっていることを実感しています。
人材サービスは奥が深い
企業にとって人材は財産、その「人」に貢献できることは、我々にとって大変幸せなこと
以前、私はクライアントとして、東京海上日動キャリアサービスから派遣を受けていました。
クライアントの立場から、送り出す側の逆の立場になって驚いたのは、戦力となるよう色々な手当をしてから送り出してくれていたということ。
また戦力化する方法も様々だということ。「奥が深い」「凄くいいことをやっているな」というのが第1印象でした。
企業にとって、人は財産。どんな世の中でも、「人」が絶対大事です。
人なしにロボットだけでは、絶対にものは動きません。
人は素晴らしい能力を持っている。それだけではなく、色々な感情を持っていて、個性もあります。
もちろん難しさもありますが、人の好さをどうやって見つけ、クライアントにちゃんと感じてもらえるような設定をできるか、それが我々の大事な仕事です。
ただ人を送り込むだけではなく、そこに「本当に来て良かった」となってもらうためには、クライアント側にも「彼女のいいところはこういうところです」や「こういう性格の方なので、こんなふうに接せられるといいと思います」など、ちゃんと伝えていくことが非常に大事。
それがお互いに上手くいくということに繋がり、能力を発揮できることになると思います。
人材に関わる大事な仕事を担わせて頂いていること、貢献できることは、我々にとって大変幸せなだと思っています。
ぜひ営業の方にも実践して頂きたいと思っています。
私は、派遣というのはひとつのステップだと思っています。
将来的にその方のやりたい事ができるようになるためのステップ。
将来やりたいことを見つけるためのステップ。
派遣業をやっているということは、そういう機会をたくさん提供できるということ。
仕事をする中で、喜びや将来の可能性を感じて頂けるようにする。
このことが、派遣業をやる上で、一番大事なことだと思っています。
うちの派遣スタッフの方が企業に登用された時、「おめでとう」と言える気持ちが非常に大切。
これは私の経営者としての拘りでもあります。
自分自身のハードルを越え、成長に繋げて欲しい
私は昔から思っていることなのですが、働く中で様々なハードルがあります。
ハードルがあるから仕事があるということでもあるかもしれませんが、そのハードルをどう乗り越えるのか。
いつも申し上げているのは、ハードルはいつも自分の中にあり、人ではない。
自分がそれを乗り越えられるかどうかが一番大事で、それを乗り越えられると自分がとても成長したということが実感できると思っています。
若い方にいつも言っているのは、一番大嫌いな仕事を、あるいは一番大嫌いな人を大好きになりなさい。
それができたら、まさに自分のハードルを越えることができた。自分が成長できたということですよ。
ぜひ、自分のハードルを乗り越え、成長に繋げて下さい。
上月 和夫 (コウヅキ カズオ )
1976年4月 東京海上火災保険株式会社 入社
2001年7月 同社 富山支店長
2003年6月 日新火災海上保険株式会社 取締役執行役員
2005年4月 同社 取締役常務執行役員
2007年6月 東京海上日動火災保険株式会社 常務執行役員
2010年6月 同社 常務取締役
2011年6月 同社 専務取締役
2013年6月 同社 取締役副社長
2014年6月 株式会社東京海上日動キャリアサービス 取締役社長(現職)
2014年10月 一般社団法人日本人材派遣協会 副会長(現職)
東京海上入社後は一貫して営業に従事。東京海上グループの日新火災への出向を経て、2007年以降、東京海上日動で中四国の営業担当役員、全店の営業企画・推進担当役員等を歴任する。
女性従業員が半数を占める同社で、女性の活躍推進は会社の成長に不可避と考え、社員の役割変革をプロジェクトとして推進。それまで社内事務を担っていた女性社員が営業にも出るなど、女性が活躍できるステージの拡大に取り組んだ。
東京海上日動キャリアサービスに転進後は、人材ビジネスを取り巻く環境やニーズ変化を見据え、社会から選ばれる人材サービス企業を目指して、様々な取組を推進している。
- 座右の銘: 誠心誠意
- お勧めの一冊:「竜馬がゆく」、「昔夢会筆記 徳川慶喜回想談」