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コラム

キャリア形成支援プロジェクト インタビューコラム この人に聞く 「キャリア」の話

「4つのチカラ」を用いた能力評価と能力向上の取り組みについて、
今後の課題はなんでしょうか。

今後の課題としては、「4つのチカラ」の向上に向けて、いかにして派遣先の協力を得るかという点があげられます。実証実験では「4つのチカラ」の評価に対して派遣先の協力が得られたケースは少なく、結果として、自己評価が中心となってしまいました。派遣社員の能力向上には、仕事経験を通じた成長の場である派遣先からも、客観的な評価を頂けるようにすることが重要です。派遣社員の能力が向上し、パフォーマンスが上がれば派遣先にとってもメリットとなるわけですから、派遣社員・派遣先・派遣元が協力して、「4つのチカラ」に関する取り組みを進めて頂きたいと思います。とりわけキャリアの分岐点に当面の目標や長期的なキャリアについて考える材料として、派遣社員と派遣元との面談等で「4つのチカラ」を活用できるのではないかと思います。

一方、「4つのチカラ」に関する取り組みを普及させていくうえでは、一つの場面だけに限らず様々な場面での活用を想定する必要があります。派遣社員は、それぞれの考え方や働く環境、働き方もさまざまです。多くの派遣社員の方に「4つのチカラ」を活用頂くためには、派遣先や派遣元の協力による活用に加えて、インターネットで気軽にアクセスできる等、派遣社員が取り組みたい時に自主的に取り組める環境をつくることも重要です。

派遣社員から正社員就業を希望される場合、
派遣社員として高い業務スキルを保有していることだけでは、正社員としての就業機会を得ることが難しいといわれますが、それはなぜでしょうか。

業務スキルが高いだけでは、正社員としての就業だけでなく、時給をコンスタントに上げていくことも難しいと思います。正社員としての就業、時給水準の上昇のいずれも、派遣社員の方が自分一人の力で実現できるわけではなく、派遣元や派遣先の理解や協力が不可欠になります。

「4つのチカラ」は、派遣元や派遣先の理解や協力を得るうえでも必要な能力だと思います。
とりわけ正社員としての就業については、その職場でずっと働くことになるわけですから、職場で他の人と上手くやっていけるか、困ったとき頼りになる存在になれるか、といった点がより厳しく判断されることになるでしょう。そういった意味でも、業務スキルの向上とあわせて、「4つのチカラ」も上げていくことが重要だといえます。

松浦さんから見た派遣会社の「4つの力」活用ポイントはどこでしょうか。

派遣先との時給交渉や派遣先への提案のときにも、この「4つのチカラ」は活用できると思います。派遣先に対して、「頑張っているので時給を上げてください」「正社員にしてください」というように、抽象的にお願いしても納得を得るのは難しいでしょう。派遣先への交渉や提案には「材料」が必要ですよね。「取り組み前と後で4つのチカラのスコアがこれくらい上がっています」「4つのチカラのなかで、このチカラが足りなかったので重点的に改善しました」というように、具体的に交渉する方が説得力があります。
業務スキルは比較的説明しやすいと思いますが、「この職場で必要な業務スキルがあるだけでなく、この職場で頼りになる人材です」という説明を、定量的にするための一つの材料が、この「4つのチカラ」だと思います。

時給交渉の場面に限らず就業中フォローでも、派遣会社の担当者が「4つのチカラ」を用いて派遣社員と課題を共有し、改善に向けて背中を押したり、スコア向上を一緒に喜んだりすることを通じて、派遣社員とのコミュニケーションの精度を上げることができます。「4つのチカラ」を上手く活用することは、こうした日々の業務の生産性の向上につながると思います。

松浦 民恵(まつうら たみえ)

【経歴】

大阪府生まれ
神戸大学法学部卒業、日本生命保険入社。
1995年 ニッセイ基礎研究所
2008年 東京大学社会科学研究所特任研究員
2010年 学習院大学大学院博士後期課程単位取得退学
2010年 現職
2011年 博士(経営学)

【近年の主な著書・論文】

『営業職の人材マネジメント』(2012年、中央経済社)
『ワークライフバランス支援の課題』(2014年、東京大学出版会、共著)
『実証研究 日本の人材ビジネス』(2010年、日本経済新聞出版社、共著)
など

【公職等】

2013年度 厚生労働省「労働市場政策における職業能力評価制度のあり方に関する研究会」委員
2013年度 厚生労働省「有期労働契約労働者の無期労働契約への転換を円滑化するための企業等の取組 支援事業」委員
2013年度 厚生労働省「短時間労働者総合支援事業」委員
2013年度 内閣府「WLBフォローアップ研究会」委員
など

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